【 Friday Night Philosophy 】 ── 生活と思索のクロスオーバー
こんばんは、川津茂生です。 12月5日、金曜日の夜。一週間の疲れをほぐす「Friday Night Philosophy」の時間です。 お気に入りのグラス(ビール、あるいは温かいお茶)を片手に、「生活と思索」が交差するこころのストレッチをしてみませんか。
さて、前回までは「脳の神経回路」というミクロな世界の話をしてきました。 そこでは、外界の情報(三人称)が、受容され(二人称)、統合されて意識(一人称)になる……という、「時間の流れの中での人称の変化」が起きていました。
今夜は、カメラをぐっと引いて、私たちの「人生」という長い時間に焦点を当ててみたいと思います。
脳の中で起きていることと同じように、一人の人間が成長し、成熟していくプロセスにおいても、その人の「人称」は、あるときはドラマチックに、またあるときは静かに変貌していくのではないでしょうか。
私はそれを、人生の「転調の季節」と呼ぼうと思います。
音楽に転調があるように、人生にも、その存在を規定する深い気分が変わっていく時があります。 若い頃の、勢いのある軽やかな気分(長調)が、ある時ふと、重く沈んだ気分(短調)に変わる。 あるいは、深い悲しみの中から、思いがけず静かな安らぎが訪れる。
この「気分の転調」の根底で変化しているのは、実は「人称」だと思うのです。
- 勢いのある時: 世界を切り拓く「強い一人称(私)」が主役です。
- 弱さが訪れた時: 何らかの事情で「私」が弱まった時、私たちは思いがけず、同じように弱さを経験している他者の痛みを受け止める「二人称(あなた・受容性)」へと変貌します。
- 成熟した時: それらの変貌を通して、自分の身体や限界を受け入れる「三人称(客観性)」への自覚が深まります。
こうして考えると、私の提唱する「一般人称理論」は、一方では「脳のメカニズム」を解き明かし、もう一方では「人生の季節の変化(転調)」を記述するための、共通の羅針盤だったことに気づきます。
すべての鍵は、「時間は、人称を変貌させる」という点にあります。
この「転調の季節」については、より具体的なエピソードを含めた同じタイトルの講演で詳しく語りました。また看護専門学校でも、それと関連した内容の講義をしました。それらはいずれも、第3巻『生活と言語』に収められています。 (講演と講義の記録ですので、語りかけるような口調を、読みやすいように残してあります)
……と、ここまで書いたところで、ちょうど今、宅配便が届きました。
ついに、第3巻『生活と言語』の見本が、十和田の私の手元に到着しました。

まだインクの匂いがしそうな、生まれたての一冊です。 この表紙の向こうに、今日お話しした「脳」と「人生」のクロスオーバーが広がっています。
詳しくは、また次回の記事で。 良い週末をお過ごしください。
[English Summary] Life’s Modulation: From the Strong “I” to the Receptive “You”
Friday Night Philosophy — A Crossover of Life and Meditations
Previously, I discussed how grammatical persons shift within the micro-world of neural networks. Tonight, let’s zoom out to the macro-world of “Life.”
Just as music modulates from a major key to a minor key, our lives experience shifts in deep underlying moods. I call this the “Season of Modulation” (転調の季節). Underneath these shifts lies a transformation of “Grammatical Person”:
- Youthful Vigor: The “Strong 1st Person (I)” leads the way.
- Times of Weakness: When the “I” is weakened by life’s hardships, we transform into a “2nd Person (You)” capable of accepting the pain of others (Receptivity).
- Maturity: Through these changes, we awaken to the “3rd Person (Objectivity),” accepting our physical limits.
My theory serves as a compass for both brain mechanisms and life’s seasons. As I write this… a package has just arrived. My new book, A Life and Language, is finally here in my hands. (See photo above)
See you at the next “Crossover.”
【著書のご案内 / Books】 この記事で触れた理論とエッセイの詳細は、以下の三部作にて詳しく展開しています。
- 『生活と思索:「先駆的二人称」を求めて』 (A Life and Meditation: Searching for “Anticipatory Second Person”) [Amazon][楽天]
- 『生活と論理: 人称のロゴスを求めて』 (A Life and Logic: Searching for “logos” of Grammatical Person) [Amazon][楽天]
- 『生活と言語:「知の言語的統合」を求めて』 (A Life and Language: Searching for the Linguistic Integration of Science) ※予約受付中 [Amazon] [楽天]
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